はじめてのWien⑩ なにゆえオーケストラの演奏者は「私語」が多いのか

ファソーファソー
ドードーシーラーファ#ファ
ファソーファソー
ドードーシーラーファ#ファ#
ff, Presto, ♩≒160, F-Dur(多分)

 何の事か分からんな(^-^;  感覚的に言えばこんな感じ:

♪ジャジャジャジャジャジャジャー、ジャジャジャジャジャジャジャー、
ジャージャージャージャージャジャジャジャジャジャジャー、
ジャジャジャジャジャジャジャー、ジャジャジャジャジャジャジャー、
ジャージャージャージャードシラシド♪

…もっとわからんな。すビバせん。
 でも、この時刻が来るのを待ちかねて、1時間ほど前に食べたスープの味も覚えていない。
 一気に、じつにあざやかに、1905年まで連れて行ってくれた。

 まだ幕は開いていない。だからカスカーダ、ツェータ、少し遅れて登場するハンナ・グラヴァリ等、この晩餐会に集う主人公たちの姿は隠れているんやけど、目の前はそれどころではない。
 指揮者および奏者30名ほどが、5秒ほどの無音をつくった直後、いきなりフルスロットルで筋肉を収縮させている。


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・Freitag, 04. Apr.2014 19:00演奏開始・フォルクスオーパー/Volksoper Wien
 Dirigent/指揮者 Michael Tomaschek


 今日は、オペレッタ「メリー・ウィドウ」Die lustige Witweである。もう一つの「本命」は、後日触れる。
 これはVolksoperがホームグラウンドなので、他の都市で観るという選択は初めから無かった。万が一「演奏がPA」等ということがあったらガッカリである。素直にウイーンに行くことにした。
 VolksoperのHPでチケットを購入したのが確か12月。€86,00+手数料。
 

Staatsoperと違ってRingの外

 
小高いところにある

 
「今日の催物」Cafe Weimar

 建物を外から一周して眺めてみると、存外小さく見え、国立オペラ座(Staatsoper)等、Ring沿いに見える建物の様に厳めしくはない。昨年カーネギーホールに初めて行った時も感じたけれど、大阪のザ・シンフォニーホールや今年改築成ったフェスティバルホールの様な面積のあるフロントエンドと比べると、 ロビーなども、こじんまりしている。
 ただし、トビラを開けた時の豪華さというか複雑さは、タイムマシンで100年とか200年前に放り込まれたような感覚がした。



 そして、座席予約の時、座席の希望やクラスは特に訊かれないままいつの間にか取引が成立してしまったのだが、最前列という望外の座席番号が通知されてきた。



 そのことは昨年の年末には気が付いていたが、実際に座席に到着してみると。
 もう、オーケストラピットの中全部丸見え。目の前、と言うより横に指揮者台がある。
 エライことになったかも、とおもった。

 
幕間のみ撮影許可

 この作品は、20年前に淀川混声合唱団で歌ったことがあるので、詳しくは知らないけど、雰囲気だけは覚えている。
 なので、指揮者が棒を振り始めるその瞬間を絶対に聞き逃してはイケナイことは感覚で判っていた。
 19時00分が近づくにしたがって、血圧が上がっていくのがわかった。
 斜め横5メートルの場所で、指揮棒構える。
 固唾を呑んだ、とはこのこと。
 で、冒頭の♪ジャジャジャジャジャジャジャー に至る。


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 幕が開いた。(以下ネタバレあります)
 この段階でドップリンガー書店の歌詞カードは購入していなかったので、歌詞はうろ覚えもイイところやったけど、冒頭、カスカーダ子爵の歌う
  Verehrteste Damen und Herren,…(淑女紳士のみなさま)
ってところだけは覚えていたので、これでやっと緊張がとれた。

 物語の舞台はポンテヴィドロ国という架空の小国のパリ公使館であるが、ポンテヴィドロ国はオーストリアのことだと思い込んでいた。
 もともと軽い恋愛賛歌であり、ヒッチコックの作品のような事はほとんどなく、かつて引き裂かれた恋人同士であったハンナ・グラヴァリとダニロ・ダニロヴィッチが最後にどうなるかは最初から分かっている。偉大なる予定調和というと多少語弊があるかもしれないけど、音楽のほとんどを20年前に聴いていたことが幸いした。
 音源は淀川混声合唱団の方からお借りしたと記憶している。この場を借りて御礼申し上げます。
 その音源はドイツ語だったので、たまたまZDaF受験中の身でもあり、編曲された楽譜に印刷されていた日本語の歌詞の余白に、わかる範囲でドイツ語の単語らしきものを書きつけて諳んじた。
 そう言えば昨年には「らららクラシック」等での放送もあって、いい時代になったもんやとおもった。

 かくして、舞台は進んでいく。
 舞台では、騎兵少尉だったダニロが予備役となってパリ公使館に赴任するも、書類にハンコを押すだけの毎日が面白くなく、高級クラブ(とカタログに書いてある)「マキシム」で猫のような女の子相手に気を紛らわせている。このダメダメさ、どうしようもなさは、たまらない。
 歌も、とっても楽しいのだ。(スマートフォンを横にすると読みやすいです)

・第4幕 Maxim/マキシム

O Vaterland, du machst bei Tag 祖国ポンテヴィドロよ、
Mir schon gegnügend Müh' und Plag'! 昼は身を粉にして働いてる
Die Nacht braucht jeder Diplomat 外交官も夜は
Doch meistensteils für sich privat! プライヴェートが必要だ

Um eins bin ich schon im Bureau, 1時に机に居たかと思えば
Doch bin ich gleich darauf anderswo; すぐさまどこかへ出かけちまう
Weil man ganzen lieben Tag だいたい一日中
Nicht immer im Bureau sein mag! 机に座ってられるわけがない

Erstatte ich beim Chef Bericht, 上司への報告
So tu' ich's meistens selber nicht; そんなもん自分ではやらない
Die Sprechstund' halt' ich niemals ein - 面会時間は守らない
Ein Diplomat muß schweigensam sein. 外交官は喋らないのがイイと決まってる

Die Akten häufen sich bei mir. 書類山積み
Ich finde, 's gibt zu viel Papier - あんなもん単なる大量の紙
Ich tauch' die Feder selten ein ペンはほとんど
Und komm' doch in die Tint' hinein! インク瓶に入れない

Kein Wunder, wenn man so viel tut, こんなに働けば、当たり前の事ながら
Daß man am Abend gerne ruht, 夜は休養が必要
Und sich bei Nacht, was man so nennt ま、いわゆるひとつの
Erholung noch der Arbeit gönnt. シゴトノツカレを癒すために


Da geh' ich zu Maxim, だからマキシムへ繰り出す
Dort bin ich sehr intim; 僕を愉しませる術を知ってる
Ich duze alle Damen, モチロンSieじゃなくてdu ※ドイツ語では心理的距離が近い/遠いでyouをdu/Sieと使い分ける
Ruf' sie beim Kosenamen, 女の子のニックネームを呼び続ける

Lolo, Dodo,Joujou, ロロ、ドド、ジュジュ
Clo-Clo, Margot, Frou-Frou; クロクロ、フルフル、マルゴ、
Sie lassen mich vergessessen この子たちと居ると
Das teure Vaterland! 偉大なる祖国なんか忘れちまう

 この曲は前にも一遍登場させたけど空港に楽譜が印刷されている。





Dann wird champagnisiert, シャンパーニュ開けーの、
auch häufig cancaniert, カンカン踊りーの、
und geht’s ans Kosen, Küssen カワイイあの娘達を
mit allen diesen Süßen: 撫で、キス・キス・キス・・・
Lolo, Dodo, Joujou, ロロ、ドド、ジュジュ
Clo-Clo, Margot, Froufrou, クロクロ、マルゴ、フルフル

 と女の子の名前を6つも呼びながら、公使館で寝っ転がってしまう。

Dann kann ich leicht vergessen こうしていると
das teure Vaterland! 祖国なんか楽々と忘れちまう…


 そこに、ハンナ・グラヴァリがやって来る。
 ハンナは大金持ちと結婚した後死別、大量の遺産を抱えていて、今はどういう訳かパリに居る。
 彼女は再婚を望んでいる。パリジャンにつかまってしまえば、ポンテヴィドロの財産はフランスのものに。


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 オーケストラをこんな間近で見ることは、オーディエンスとしては初めてである。
 パフォーマー(阪大混声合唱団)時代に一回あるけど、オケの背中を見る形なので、奏者の表情は見えなかった。
 だから、この作品の音楽自体は多少のなじみがあったけど、オーケストラについて今日発見したことが少なくとも2つあった。
 どうして、楽器を弾く姿って、こんなにセクシーなんやろか、というのが、思いついた言葉の半分ぐらいである。
 では、残りの半分は?

 それが、今日の表題である、
  「なんでオケの奏者は私語が多いのか
という事である。
 もう、こそっと話をしているという風ではない。とーっても、楽しそうである。
 例えば合唱団員が舞台上で何か必要があっても、隣の歌い手と話を交わすことはほとんどない。僕自身はそういうことはあってもイイと思うんやけど、まあないのである。が、楽器の奏者は楽器で雑音を出さなければ良いというコトらしい。
 全員が全員同じ様ではなくて「それにしてもよー喋るやっちゃなー。舞台上に影響せえへんのやろか?」と言うのが数人おる。その筆頭が、今日は指揮者の目の前に座っている20歳代と思われる女性バイオリン?奏者。顔の相なども含めた全体から判断して東洋人、それも日本人のようだった。距離が距離なので目が合いそうになるんやけど、そうするとどうも、その後終演まで居づらくなるような気がして、フォーカスが合いそうになるのを必死で堪えた。
 で、その楽しそうな話の内容は当然演奏についてなんやろけど(多分)、それすら…どうもアヤシイような気がしてきた。




(澁谷 光基)(渋谷 光基)

 次回は、第11回「さて女というものは」"Ja, das Studium der Weiber ist schwer"
 7月17日(木)12::00 更新予定です。
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