はじめてのNY⑥ アメリカ海軍テキスト事情

・2013.4.27(Sat),13:30(GMT-4)

 3日目の朝になった。
 なんだかしんどかったので、朝はホテルの部屋で、昨日買った楽譜などを眺めながら、11:00ぐらいまでベッドの上でゆっくりと過ごした。7泊同じ宿というのは、こういう時助かる。


大きな地図で見る Macy's(34条) → Barnes & Noble(17条)

 「Macy'sという百貨店のエスカレータがレトロスペクティブで面白いですよ」、と言われていたので、土産物を見繕うついでに覗いてみた。34条にある。
 「何事かいな…」と思って見に行ったら、そのエスカレータは、木製だった。
 
考えることは一緒

 法律には詳しくないので、日本に木製のエスカレータが無い理由が法令の問題なのかは良くわからないが、このエスカレータがいつごろ作られたものか、ということに興味を持った。
 エンジニアが見るべきは「銘板」である。通常、機器の製造者・年月・電動機出力など各種規格で指定された仕様および参照規格が記してある。

4 2013 Thyssen Kruppとだけ書いてある

 残念ながら、このエスカレータの銘板には、内容が刻印されていなかった。ただ、年次点検をニューヨーク市が行ったと言う趣旨の表示だけが、貼り付けられていた。これでは「銘板失格」である。

 …帰国してから調べたら、日本国内でもエスカレータに銘板なんか貼っていないことが判った。
 偽物エンジニアが知ったかぶりをする事ほど不格好な事はない:-)

 地下鉄で34条から14条まで降りた。降りたあと東に向かって少し歩いたので、使った電車は多分F線あたりだと思う。
 昼飯を17条"Basta Pasta"で食った後、今日の目的地「書店」へ。
 ガイドブックに載っている "Barnes & Noble" のフラッグシップ、17条店の扉をくぐった。ユニオンスクエアの北隣にあると言えば分かりやすいかもしれない。
 お目当ては、「アメリカの電気教育のテキスト」である。
 うまいことに、17条店の店頭に、
  「テキストは、弊社18条五番街店にあります」
と大書してくれていたので、迷わずに済んだ。

 18条店は、ちょっと天井の低い2層(3層だったかも)構造になっていた。
 とにかく中に入って、委細構わず、店内を端から端まで見て回った。
 最初は電気の本でなく、たまたま会社で課題をもらっていたのを思い出して、「機械要素」に関する本を探した。
 店員を捕まえて、いや逮捕したわけじゃないけど、"I am an instructor for an japanese tecnical training center,..."と自己紹介してから、"I would like to seek books, whose Thema*じゃなかった, whose theme are for machine elements, zum Beispiel*, じゃなかった, for example, about levers, gears, for Industry technical …,(*はドイツ語とチャンポンになってて訂正したところ)…もうグチャグチャで自分でも何を話しているか分からなくなってきた。
 それでも、3分後ぐらいに、
 "Oh!…Engeneering!"
と通じて、書棚に案内してもらえた。どうも、エンジニアリングと言うべきだったらしい。
 いろいろな本があったが、難しそうな本が多くて選択にこまった。
 例えば、字ばかり多くて、写真や図が全然無いペーパーバックでは、余り参考にならない。
 「高校生レベルの工業の本」を、とも聞いてみたが、どうも、レベルが高い。そう言うと日米に差があるようなニュアンスがするというか、要は語弊があるのだけど、何だかその本を読むまでの準備が、英語が解らんと言うことも含めて大変そうなのだ。だから、この際「中学生が読むやつ」と言ってみた。

 結果から言えば、たまたま見つかった。店員が示した書棚と、微妙に違うところにあった。
 "The Book of BASIC MACHINES, The U.S. Navy Training Manual"

 内容は驚くようなものではないが、記述の仕方が旨い。
 まず、「マシンと言うものを原理的に整理していくと「てこ」「滑車と巻上機」「車輪と軸」「斜面とクサビ」「ネジ」「歯車」に分かれる」と、明快に書いてあって、目次を読むだけでもそれが解るようになっている。

 この本の用語やものの言い方は、恐らくアメリカの外でも通用しそうであるとおもった。日本国内でも使えそうである。さすがU.S.Navy、「標準をつくる」ことには長けている。
 
てこの種別。図はもう少し工夫の余地も
 
「外燃機関」と「内燃機関」を区別する
 
「1馬力」の説明

 もうちょっと紹介したかったんやけど、会社に帰ってこの本について報告したら、上司が取り込んでしまって、返してくれなくなった(@_@) それで、取り敢えず写真だけ撮らせてもらった。 



 次が、電気関係の本。
 私の働いている技術研修所では、新入社員からベテランまで様々な方が来られるが、電気回路や電源や負荷や配線や電気機器をどう説明すべきか、いつも悩んでいる。
 職場は(文部科学省管轄の)学校ではないが、日本の高等学校の工業科の「電力応用」「電気機器」などのテキストが、どういういきさつかは分からないが、昔から置いてある。
 これが実に読みにくい。
 というより、この本だけを読んで内容を理解できる人が居たらお目にかかりたい。
 内容は、電気を初めて習う人にとっては、決して易しくない。資格試験で言えば電験3種レベルぐらいなのだけど、写真が少なく、図表も貧弱で、もちろんモノクロであり、実物のイメージが全然わかない。
 カラー写真の豊富なオーム社の「新電気」でも毎月読んだ方が、はるかに力が付くと思う。
 教科書というものが独習を建前としていない、ということなのだろうが、これでは工業高校の生徒が気の毒である。勉強が嫌いになるのも無理はないとおもった。
 結局、面積を惜しむからこうなるのだ。ホンマに分らせようとすれば、今の10倍ぐらいの面積の図や写真を使うぐらいの事をしないと、理論と実際は結び付かない。例えば交流回路の問題だと、少なく見積っても、
 ・電気回路図
 ・実態の電気回路(上と区別がつきにくいけど、例えば直流機や同期機の電機子の実際の配列など)
 ・電源および負荷の、電圧・電流・電力の「瞬時値表現」とそのグラフ
 ・上記のベクトル表現およびインピーダンスの三角形、電流・電圧の三角形、電力の三角形
 ・複素数表現(極座標形式(I∠Θ表現)、直角座標形式(IcosΘ+IjsinΘ表現)、指数形式(exp(jΘ)表現))
  のうち適当な形式を選んでV=IZを解く
ぐらいの事を、全部描かないと、全体感の理解は難しい。全部描かれたら描かれたで「長くて読むのがしんどい」と言うことになるのかもしれないけれど、ただでさえ解りにくいことを、説明の途中で省略されたのでは、暗記モノになるしかないではないか。
 今年の3月に、新聞等で「大学生が書いた電気基礎」という高等学校工業科用の教科書が文部科学省の検定を通過したというので買ってみたが、記述に工夫の跡は見られるものの、さして易しくなっている感じはしなかった。「電気基礎」というより「電気理論基礎」とでもいうべき内容で、ビオサバールの法則まで言及している本が150ページ足らずということが、まず信じがたい。それでも、学生をしながら150ページの本を書くことは、大変だったと思う。
 ともかく、もっとベーシックなことを、省略せずに根っ子から説明している本が欲しい。
 その辺を店員に説明するのは骨が折れた。と言うより、そもそもそんな英語の表現力が無かったので、結局は自分の目で一つ一つ見ていくしかなかった。
 先の「by U.S. Navy」ほどではなかったけど、それでも、4冊ほど購入した。



(1)技術基準コード対照表(DeWALT) 写真左
 内容は、主に住宅内の電気工事、つまり日本で言えば第2種電気工事士が施工できる「一般用電気工作物」に相当する工事の典型的な施工例と、その際参照すべき技術基準の条文を示している。
 日本で言う「電気設備の技術基準を定める経済産業省令、およびその解釈」に相当する、アメリカの技術基準は、どうやらNEC(National Electrical Code)と言うものらしいことが判ったが、州によっても事情が異なるのかもしれない。
 NEC自体を読むことは今は取り敢えず避けておいて(そんな根性は無いし)、取り敢えず写真が沢山あったので、見た目の楽しさで購入した。
 
典型的な?バスルーム

(2)電気資格試験問題集(DeWALT) 写真右
 英語の辞書を引くのが億劫で、内容をまじめに読んでいないのだが、どうやら、易しい方から
 ・Maintainance Electrician(電気保全工(以下意訳))
 ・Residential Electrician(住宅電気工)
 ・Journeyman Electrician(職人電気工)
 ・Master Electrician(親方電気技師)
 ・Sign Electrician わからん。(申し訳ない
という序列になっているらしいが、掲載されている問題を見るざっと見る限り、電気使用場所以外の事、つまり発電・変電・送配電に関する問題が見当たらない。また電圧も高圧や特別高圧に関する言及が無いようだ。だから、日本でいうところの「電気主任技術者」に相当する資格はまた別にあるのかもしれない。
 
住宅電気工の問題。アースの目的は?
 
解答を見たら「General Knowledge」だって。

(3)"Electrician's Pocket Manual"(McGraw-Hill)
 オーム社の「電気工事士手帳」みたいなポケットブック。
 

 発電所から需要家までの電圧の変遷。日本の標準電圧とかなり違う。
 2300V/4000V は、三相4線式かな。

(4)"Homework helper Physics"(Greg Curran)
 意訳するなら「教科書ガイド」?
 
さして面白くなかった。数式ばかり多い。


 アメリカの技術関係の本を読むときに戸惑うのは「単位」がSI単位で記されていないということである。
 だから、先の「1馬力=何ワット?」のような問題があるし、長さはfeetやinch、質量はlbs(ポンド)、温度も時々℃でなくFで記してある。

 日本の「電気事業法」を筆頭とする電気関係の法令は、15年ほど前に大改定されている。
 理由は「国際規格への準拠」である。
 例えば「電気設備の技術基準を定める経済産業省令」が平成9年に改正(法律を変える場合は「改正」と言わなきゃいけないので)された。幹となる78つの条文のみを残して他の大部分は「解釈」に格下げし、平たく言えば他国からの電気製品を受け容れやすくした。
 そのほか、JISの電気図用記号(JIS C0617)等が改訂されている。2種類の記号を覚えなければならない保全マンにとっては迷惑この上ないが、仕方がない。
 アメリカ政府も、SI単位にそろえるぐらいのことはしてくれないと。


 今回は、買った本をまじめに読まなかったので、いま読み返しても何だか内容らしきものが感じられない。
 なので、"Barnes & Noble"で買った物を一つ紹介して、お茶を濁したいと思う。
 僕の勤務先では、資料やパソコンを「裸のまま運ばない」というルールになっている。新入社員などの受講者にも研修日誌やテキストを通所時に裸で持ち運びしないように言っているので、インストラクタも同様に、必ず袋物に入れて運ぶことになっている。
 それで、手頃なトートバッグが見つかったので、衝動買いした。
 ちょっとフェミニンな感じがしたが、通勤に使うわけではないので、職場の中だけで使うのなら許容範囲と判断した。
 
$19.95

(澁谷光基/渋谷光基/しぶやこうき)

「はじめてのニューヨーク」は、毎週木曜日0:00に自動更新します。
 次回は、「複々線の地下鉄」7月4日(木)0:00に更新します。
 ただし、その日の出来事などを都度投稿することがあります。

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